契約書の印紙税迷ったら【法務部1年目の記録】

 私が法務部署に配属されて最初にマスターしなくちゃいけなかった法律は印紙税でした。

紙の契約書が減っている現在ですが、まだ無視することもできない印紙税について

私と同じ法務部1年生の方に向けて簡単にまとめたいと思います。

目次

  • 印紙税って何?
  • どうやって納付するの?
  • 納付しないと罰則があるの?
  • 課税文書とは?
    • 運送に関する契約書(1号文書)
    • 請負に関する契約書(2号文書)
    • 継続的取引の基本となる契約書(7号文書)
    • 変更契約書
  • 終わりに

印紙税って何?

印紙税とは印紙税法に定められている税のことで、

この法律に規定されている文書(以下、課税文書という)について課されています。

どうやって納付するの?

作成した課税文書に収入印紙を貼り付けて消印をする方法です。

印紙税額については課税文書とは?で解説します。

消印とは…貼り付けた印紙に半分かかるように押すハンコです。

印紙にハンコが押されていることで再利用ができないようにします。

(印紙の金額の数字にはかからないようにハンコを押すと

「おっ、丁寧にお仕事しているな!」と思います。※個人の感想です。)

納付しないと罰則があるの?

印紙を貼らなかった時は、貼るべきだった印紙税の額の3倍

消印をしなかった時は、貼った印紙と同じ額が過怠税として徴収されます。

実際は税務調査があったときに見つかるもので、それが過怠税として認識して

行ったものでないと判断された時は、印紙税額の1.1倍の過怠税となります。

課税文書とは?

印紙税額一覧表にまとめられています。

中でも私が使う機会が多かった契約書についてまとめていきます!

運送に関する契約書(1号文書)

その名の通り運送契約です。

人(旅客)か物(運送)かは問いません。

契約書に記載の金額によって、契約書に記載の金額によって決まります。

ちなみに…宅配便の送り状にも小さく印紙税についての記載があります。

探してみるとちょっと楽しいかもしれません。

契約書に記載の金額印紙税額
1万円未満※7号文書に該当しない0
10万円以下200円
10万円超え50万円以下400円
50万円超え100万円以下1,000円
100万円超え500万円以下2,000円
500万円超え1,000万円以下10,000円
1,000万円超え5,000万円以下20,000円
5,000万円超え1億円以下60,000円
1億円超え5億円以下100,000円
5億円超え10億円以下200,000円
10億円超え50億円以下400,000円
50億円超え600,000円
金額の記載がない時200円
1号文書印紙税額

請負に関する契約書(2号文書)

その名の通り請負契約書なのですが、

名前が「業務委託契約書」になっていることもあるので注意です。

請負と契約書のタイトルがなっていなくても、

実態が請負契約だと対象になります。

業務委託契約について…業務委託契約書は請負の場合もあれば

(準)委任契約の場合もあります。

実態が請負なら印紙税がかかるけど(準)委任なら印紙がいらないので

その判断も法務部員としてできるようになりましょう!

(今度その記事も書こうと思います。)

こちらも契約書記載の金額によって印紙税額が決まります。

契約書に記載の金額印紙税額
1万円未満※7号文書に該当しない0
100万円以下200円
100万円超え200万円以下400円
200万円超え300万円以下1,000円
300万円超え500万円以下2,000円
500万円超え1,000万円以下10,000円
1,000万円超え5,000万円以下20,000円
5,000万円超え1億円以下60,000円
1億円超え5億円以下100,000円
5億円超え10億円以下200,000円
10億円超え50億円以下400,000円
50億円超え600,000円
金額の記載がない時200円
2号文書印紙税額

継続的取引の基本となる契約書(7号文書)

こちらは具体的には、

「売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負」

(それ以外に代理店契約書、銀行取引約定書、信用取引口座設定約諾書、保険特約書なども

該当しますが、今回は割愛します。)

であって、3ヶ月以上の継続契約が対象になります。

こちらは一律印紙税額4,000円です。

1、2号文書との見分け方

運送も請負も今まで見てきたのに、これも二重納付する

というわけではありません。

1号文書または2号文書と7号文書のどちらにも該当する時は、

具体的に金額の計算ができるかどうかで決まります。

以下例①〜③のどれになるか判断してみてください。

例①

請負契約において、委託金額は月に3万円で契約期間が1年間という時は

3*12=36万円の金額(計算できる)なので、7ではなく2号文書になり印紙税は200円です。

例②

期間の定めがない(または金額の定めがない、あるいはどちらも定めがない)契約書だと

計算ができないので7号文書で印紙税は4,000円になります。

例③

例①と同じ条件だけど、契約期間に自動更新がついている場合でも、

計算できる分だけ、つまり例①と同じ36万円が契約書記載の金額となり

印紙税は200円になります。

変更契約書

変更契約書とは、すでに締結済みの契約書について、

金額や期間などを変更したいときに締結する契約書のことです。

例えば、案件の期間が延びて1か月から2か月になった、

金額の改定があった、というときが多いかなと思います。

その時は下記の順番に見ていきましょう!

① 変更前の契約(以下原契約という。)に印紙がある。

原契約が印紙の対象となる契約書でなければ変更契約書にも印紙は不要です。

② 原契約が1,2または7号文書のどれに当てはまっていたのか確認する。
③ 変更契約書の変更内容が②で確認した種類の契約書の重要な事項に当てはまっているか確認する。

重要な事項とは印紙税法基本通達別表第2に規定されていて、下記のとおりです。

第1号の4文書(運送)、第2号文書
①内容
②期日または期限
③金額
④取扱数量
⑤単価
⑥契約金の支払い方法または期日
⑦割戻金等の計算方法または支払方法
⑧契約期間
⑨契約に付される停止条件または解除条件
⑩債務不履行の場合の損害賠償の方法
第7号文書
共通契約期間
(※①原契約の基本契約書を引用して契約期間を延長するものに限るとし、
②当該延長する期間が3か月以内であり、かつ、
③更新に関する定めのないものを除く。
→②③については、7号文書に当てはまるとされる基準の一つである「3か月以上の継続契約」と同じと考えればOK!)
売買、売買の委託、運送、運送取扱または請負に関する契約書①目的物の種類
②取扱数量
③単価
④対価の支払い方法
⑤債務不履行場合の損害賠償の方法
⑥再販売価格
②対価の支払い方法
「重要な事項」簡易まとめ
④ ③で当てはまった重要事項に金額に関係する変更がない場合

原則は原契約の時と同様に判断してよいので金額の記載がない契約書として

1または2号文書なら200円、7号文書なら4,000円の印紙税となります。

例外として、原契約が1または2号文書と7号文書のどちらにも該当するが、

契約金額の計算ができたために1または2号文書に該当していた場合で、

変更契約では契約金額の記載がないときは、この変更契約は7号文書に該当

4,000円の印紙税となります。

⑤ ③で当てはまった重要な事項に金額に関する変更の記載があるとき

変更契約書に原契約が特定できる記載がきちんとある場合は、

金額の増加についてはその増加分、金額の減額については金額の記載のない文書として取り扱われます。

例えば原契約で100万円だった契約金額を「120万にする」あるいは「さらに20万増加する」というような記載があれば、その増加分20万円に対して印紙税がかかるので、

1号文書であれば400円、2号文書であれば200円の印紙税となります。

変更契約書に原契約が特定できる記載がない場合は、

その変更契約書に記載された金額がそのまま契約書に記載の金額となります。

つまり変更契約と考えずに1,2または7号文書のどれに当てはまるか考えればOKです。

終わりに

自分は法務部に入ってそう長くないですが、印紙税については

契約書の管理担当だったこともあり、前任の先輩から叩き込まれそこそこ詳しくなったなあと

自覚する分野になりました。

私と同様に法務部に若手で配属されてとりあえず契約書管理を任される方は

ほかにも多いのではないか?と思い、思い出しながらまとめました。

参考になれば幸いです。

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